長年の取材を通じて筆者は、首都圏の中で私鉄路線のもつ「ポテンシャルの高さ」を判断する指標を次のように考えている。
首都圏のなかで、それぞれの街のもつ住環境が素晴らしく、ポテンシャルが高いと誰もが認めれば、立地のもつ資産性など「高い評価」が得られるからである。それでは具体的にどの路線か。筆者は、そのうちのひとつは「京王井の頭線」と考えている。具体的には、
まず交通利便性が高い。
「高井戸駅」から渋谷、新宿へそれぞれ15分、吉祥寺へ9分、大手町へ29分と主要駅が近い。平日朝の渋谷方面行運転本数は、7時台8時台合計45本と多く、ホームに立つと、ひっきりなしに来る感じである。この軽快なアクセスを活かすべく、京王電鉄は、渋谷、新宿へのいずれかの定期運賃にプラス1,000円すれば、定期券以外の渋谷、新宿に行き放題の「どっちーも」というパスを提供するという粋な計らいをしている。これにより週末は気分によって渋谷、新宿で楽しむことができるし、ビジネスでも渋谷、新宿の取引先やオフィスに行きやすく交通費を節減できるというメリットがある。
カーアクセスも、近くを環状8号線が走っているので、起点となる羽田空港へは一直線で行けるし、第三京浜、東名自動車道、中央自動車道、関越自動車道、甲州街道など主要幹線道路と交差しているので、どこに行くにも便利である。
生活利便性も高い。旧石器時代から人が住み、江戸時代初頭には甲州街道ができ宿場町が誕生し、その後に環状8号線が整備されるなど、高井戸は住宅街として長い歴史を有しており、結果として街は熟成し、暮しやすい住環境となっている。
例えば毎日の買い物。高井戸駅のエキナカには書店、カフェなどが入る京王リトナード高井戸があるし、徒歩圏内にはスーパーのオオゼキ、オリンピック、イトーヨーカドーが利用できる。1月3連休最終日に訪ねたが、オオゼキは青果の日と同時に朝市を開催しており、店頭では中高年を中心に野菜などが飛ぶように売れていた。店内の回転ずし店も午前中にも関わらず、満員、行列という盛況ぶりである。店内がゆったりしていて子供連れファミリーが多いオリンピックは、品数が豊富で惣菜、パン工房、フードコートに加え、文具、インテリア、ペット、ガーデニングなどのコーナーもあり、まさにミニデパートの雰囲気で、多くの人たちで賑わっていた。
以上のように路線力、アクセス力、暮しやすさなどをみてきたが、これに加え温水プールなどの公共施設、善福寺川緑地や柏の宮公園などの緑の自然を考慮すると、「街のもつ価値」が見えてくる。